2019年1月16日、「第160回芥川賞」の選考会が行われ、上田岳弘さんの『ニムロッド』、町屋良平さんの『1R1分34秒』が選ばれました。
そこで、今回は『ニムロッド』に焦点を当て、あらすじや口コミ・感想をまとめてみました。
一部ネタバレを含みますので、「これから読みたい!」という方は「ネタバレ」の箇所は飛ばして読んでいただいた方が良いかもしれません。
芥川賞『ニムロッド』のあらすじは?ネタバレあり
ニムロッド・あらすじ
『ニムロッド』は、ビットコインの採掘を担当している主人公の視点から描かれる物語です。
登場人物は、主人公のほかに、中絶や離婚のトラウマを抱えた恋人、小説家への夢に挫折した同僚が中心になって展開していきます。
それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。 あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。すべては取り換え可能であったという答えを残して。
(引用:https://bookwalker.jp/series/189912/)
ニムロッド・ネタバレ
ここからは一部ネタバレを含みます。
仮想通貨の物語ということで、仮想通貨を巡る事件やミステリーのように思われますが、そうではありません。
物語は、主人公でシステムエンジニア(SE)の中本哲史(なかもとさとし)がある日、社長に呼ばれ、ビットコインを採掘する新規事業を任されるところから始まります。
新規事業といっても、担当は中本一人だけ。
中本は、普段から感情をあまり表に出さず、淡々と仕事をこなす合理主義者。
そんな中本は、仕事が終わると恋人・田久保の疲れを癒やし、名古屋支社に務める同僚・ニムロッドこと荷室からの謎のメールに対応する日々を送っています。
謎のメールの内容は、「ダメな飛行機コレクション」
荷室は、世に発表することのない小説を中本一人に送っています。
荷室が送るメールの一部をご紹介すると、
- 駄目な飛行機があったからこそ、駄目じゃない飛行機が今ある
- でも、もし駄目な飛行機が造られることがなく、駄目じゃない飛行機ができてしまえば、彼らは必要なかったのか?
- 今の僕たちは駄目な人間なのか?いつか駄目じゃなくなるのか?
- 人間全体が駄目じゃなくなったら、これまでの人間は駄目だったということになるのか?
そんなメールの数々です。
少し哲学的なように思えますが、この小説では荷室が送るメールを通して、便利になった現代に疑問を投げかけている、そんな物語のように思えます。
最近ではスマホや仮想通貨など、新しい価値観が生まれ、私たちの生活はどんどん便利になっています。
一方で、そんな無駄のない「完成」されたものに、少し寂しさを覚えるというのも事実。
ニムロッドは、仕事をする傍ら、膨大な「ダメ」を積み重ねながら小説を書いていますが、そんなことを考えているとやるせない気持ちになるといいます。
現代ならではの視点で描かれた作品といえますね!
芥川賞『ニムロッド』の口コミや感想
次に、実際に小説『ニムロッド』を読んだ方の口コミや感想をご紹介いたします。
飛行機の日、という文字を見て、先日読んだ『ニムロッド』思い出す。途中、泣きそうになった。
文章の反復が馴染んだ頃に、突然、感情を激しく揺さぶられる。でも、どうしてそうなるのかは上手く言葉にできない。一見、実験的でありながら、すごく根源的な感覚に響いてくる小説だった。— 島本理生 (@rio_shimamoto) 2018年12月17日
群像12月号に載ってる上田岳弘の「ニムロッド」を読んだ。価値が「残らない」ことを恐れないビットコイン文学。大変刹那くて面白かったのでツイート検索してみたけど呟きが殆どない。文芸誌なんて誰も読んでないんだなぁ。
— 宿男 (@jukuwo) 2018年11月27日
「ニムロッド」読了。
芥川賞明日発表だからギリギリでした(しかも一作品しか読めんかった)
仮想通貨、出生前診断、開発途中で生み出された駄目な飛行機達、全てを手に入れた果ての物悲しさとか。— まな (@Runaji0210) 2019年1月15日
上田岳弘『ニムロッド』読了。極小の関係性の中での話を描きながら、大きな流れの中にいることを意識させられる。そのソースコードに思考を巡らせつつ、自分を抱え続けることすら難しくなった人。個人と世界は繋がってしまったから。「もう人間は、駄目な飛行機を造れなくなったんだ」。
— よし (@violet1music) 2019年1月2日
少し難しい作品ということもあり、実際に読んだ方はまだまだ少ないようですね。
まとめ
第160回芥川賞に、上田岳弘さんの『ニムロッド』が選ばれました。
町屋良平さんの「1R1分34秒」との同時受賞ということで、非常に注目を集めています。
登場人物を通して、現代への疑問を投げかける、そんな作品のように思えます。
「難しい」との声もあがっていますが、一方で感情を揺さぶられるという声も。
皆さんも一度読んでみてはいかがでしょうか?
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パソコンをやらない世代(70歳以上)には、全く理解できない文章ばかり。こんな小説が芥川賞とは、全く納得出来ない。これからの時代の小説はこんな風になってゆくと思うと悲しい。
もう芥川賞を読むのは止めようと思う。 82歳老人
PC用語が多く、PCに不慣れな70歳以上の人には読み進むのが難しい。
芥川賞がPC世代だけを対象としていると思うとかなしくなる。
今後は芥川賞を読むのは止めようと思った。ともにも読めないよ!と伝えるつもり。
82歳